トコウ 、廃塗料の資源化に挑戦
工業塗装事業を行うトコウ(埼玉・斗光健一社長)は今年から、微生物分解を利用した廃塗料の再資源化技術の運用を実施している。
INBOUND JAPAN(以下、IBJ)の微生物応用研究所主幹の宮崎利久氏の力を借り、廃塗料から資源化への仕様を5カ月で達成。現在は、トコウの塗装工場で発生する廃塗料約6トン(年間ベース)の再資源化に成功している。
資源化への流れはシンプルだ。工場で発生した廃塗料と微生物となる処理菌をバイオリアクターへ投入。15分ほどで資源化される。トコウ側がプロジェクトに先立ち、宮崎氏へ「誰でも、簡単に扱えるような仕様を組んで欲しい」とリクエストした通りに、処理自体は簡単な作業となる。
塗料と処理菌の配合比は廃塗料1に対し、処理菌2の割合で分解を行う。これはトコウの配合例で、溶剤、水性、粉体等、各事業所の廃塗料によって配合比の調整が必要だと言う。6tの廃塗料から1・3倍、約7・85tの固形燃料材料が資源化される。宮崎氏は「一番多い廃塗料の種類に焦点を当て、再資源化するのが良い」と話す。
資源化された固形燃料の原料は、現在トコウでは処理菌の水分調整の乾燥工程に使用している。今後は、塗装乾燥工程の燃料等にも検討され、燃料用の流通販売にも期待がかかる。
燃料化へのプロセスについて、「廃塗料の処理という意識では続かない。原料を製造しているという考え方に変える必要があり、そうなれば意識が変わる」(宮崎氏)と、再資源化のポイントを語る。
処理用の微生物は溶剤系にはアルカニボラクス属等の石油分解菌(基菌)を使用する。基菌は家畜の排出物から採取できる。仮に同システムのビジネス展開が広がっても供給量には問題ないと言う。
廃塗料の微生物による分解技術は、宮崎氏が2003年から大手自動車メーカーに採用された技術が骨幹にある。その時は、採用自動車メーカーが焼却炉を停止・廃棄するということで廃塗料の問題が持ち上がり、同プロジェクトの依頼があったという。その後、複数の自動車、二輪メーカーの工場でも採用されてきた。廃塗料に含まれるトルエンやキシレンも微生物が分解する。
一方、トコウが廃塗料の問題意識が高い理由に、少量多品種形態の被塗物が多い点が挙げられる。調色も1日100色にものぼる。その分、廃塗料として産業廃棄物となる処理も多い。塗料の使用は少量だが、発注はロット単位で決まっており、実量よりも多く発注する必要があった。そのため、塗膜とならない塗料を活用できないかと考えていた。同社では、塗料費用は月200~300万。そのうち塗膜になるのは2~3割。使用されない塗料のことも考えれば、業界の課題だと感じていた。
そこで同社は、廃塗料の資源化をスタートする前に「塗料代0円、SDGs塗装」プロジェクトを展開した。これは使用しなかった塗料を別の顧客へ転用し、その際の塗料代は無料とするもの。塗料の無駄、廃棄を減らす取組みだ。もちろん顧客の同意を得た塗料のみがトコウに在庫され、SDGs塗装を希望する顧客の注文を待つ。
こうしたトコウの塗料を無駄にしない活動を聞きつけた宮崎氏が、廃塗料の再資源化の提案を同社に打診したことがきっかけとなり、課題と解決技術がマッチして、短期間で廃塗料の資源化が確立された。トコウの斗光健一社長は「正しいことをやるのには、コストがかかるが、優れた技術なので広めていきたい」と話す。また、ビジネス展開には廃塗料投入から資源化までの自動化が必要と語る。
同システムの採用を増やすためには、自社内で設備込みの資源化を確立するか、バイオリアクターを積んだトラックを流通させサプライチェーンを通じて普及させることが考えられる。担当の柴田和洋営業部長は、「2~3年を目途に採用事例を増やして行きたい」と今後を見据える。
℡04・2935・0888