粉体塗料市場の事業展開に〝攻め〟を
塗装工程の省人化を図れるという優位性、また環境対応の課題を解決する時代に適する塗料として、粉体塗料・塗装がここにきて再び注目されている。
日本における粉体塗料市場の動向を見ると、令和3年度の粉体塗料の出荷数量は4万8539tで前年度比6・2%増となっている。粉体塗料は10年程前のブームから下降傾向にあり、令和2年度はコロナ禍の影響も加わり大きく落ち込んでいたが、巻き返しを図る数値を示している。
年々、環境に配慮した塗料開発が求められる社会において、今後もますます粉体塗料の需要増が期待できそうだ。
このニーズに対応すべく、大手塗料メーカーが昨年12月に粉体塗料製造新会社を設立。さらに粉体塗料工場を新たに建設し、事業拡大を進めると発表した。この国内粉体事業の拡大により、2030年度には売上高90億円(2021年度比倍増)を見込んでいる。また、海外においても、同社欧州連結子会社が欧州および米国の粉体塗料・合成樹脂事業運営グループの子会社化を発表。事業を展開する海外各地域での技術開発や商品拡充を強化することが狙いだ。この一連の動きは、粉体市場の強化を図り、グローバルな展開を進めていくために、大きな投資に踏み切った事例といえる。今後、国内外の粉体市場にどのように影響してくるのか注目される。
変容する社会のニーズに合った事業展開を即座に図ることが、塗料・塗装産業の明暗を分けることにもなる。自社の資産・資源を踏まえたうえでの〝攻め〟の姿勢は時に必要不可欠であろう。