女性ネットワークの会、10周年記念講演会
日本建築仕上学会・女性ネットワークの会(熊野康子主査)は「10年の歩み、そして次世代の仕上技術に向けて」をテーマに、10周年記念講演会を6月22日午後1時から東京都美術館講堂で開催した。
開会のあいさつに立った熊野主査は、「女性からの横の繋がりが少ない、垣根を超えた女性の会ができないかとの声から女性ネットワークの会を設立した。ちょうどその頃、現場に出て働きたい、職人になりたいなどの女性が増えていた。本会はこれまでに、建築分野で働きたい女子学生だけでなく、男子学生も参加できる塗装講座や学生向けのイベントを多数開催している」などと述べ、同会10年間のこれまでの活動と今後の予定について紹介した。(同会設立背景については、塗料報知5月7日号10周年記念インタビューにて掲載)
最初の講演では、太田怜美氏(関西ペイント)が「鋼構造物の長寿命化に向けた次世代水性塗料の開発と今後の展望」とし、塗料の役割から塗料の防食性や防錆顔料の選定、開発品の特長、今後の展望としてはLCCの数値化の検討について解説。女性でも現場に直接足を運びできることをやる、製品開発中に自身が結婚した経験談を紹介し、両立するためには完璧を求めないなどとコメントした。
次に、鎌田由佳氏(大日本塗料)が「水性内装用低臭塗料の開発」とし、塗料メーカーの女性技術員は後輩が増加している、育児による時間的制限(残業ができない)他、同社2022年度の男性社員育児休暇取得率が60%であった、など自身の経験事例等を交えて述べた。開発面では、水性内装用低臭塗料を開発するに至った背景について、オフィスビルやテナントの塗替えにおいての臭気の課題の解決が可能であること、特徴について解説した。
最後に、織田麗氏(シーカ・ジャパン)が「プライマー塗付量の変更とプライマー接着可能時間の変更」を講演。
前身であるダイフレックスから今年4月にシーカ・ジャパンに統合されたこと、外資系組織の特長として長期休暇が取りやすいなどのメリットを伝えた。また、開発面ではウレタン防水材の公共建築工事標準仕様書に定められたX‐1、X‐2工法について解説。課題として、塗布量や接着可能時間の延長などを挙げた。
講演後は、「第5回建設業で働く女性へのアンケート」についてのパネルディスカッションが行われた。アンケートには、309人もの回答が寄せられた。
パネルディスカッションは、司会を熊野庸子主査が務め、パネラーに諸橋由香里氏(マサル)、森嶋順子氏(トーヨー科建)、宮原悦子氏(クレオールソシオ)、講師の鎌田氏が参加。女性活躍のために今後必要なこととして、男性の育児休暇や在宅勤務の普及等、日本企業のフェムテック(女性の健康を支える商品やサービス)への対応については、とりやすい休暇、上司の対応等が挙げられ、活発な意見が交わされた。