神戸異人館、シュウエケ邸が改修
神戸市北野町の異人館、重要文化財「シュウエケ邸」は、外部修復工事が2023年7月~12月の工期で行われた。建物を大切に維持し次の時代に残していくという強い想いから、今回の改修に踏み切った。
2月10日から復活したシュウエケ邸がグランドオープンし、1階邸内と庭園が一般に公開。今後はレンタルスペースとして活用される予定である。今回の修復工事の内容は、外壁の塗装、鎧窓、建具の修復および仕上げ工事となる。設計監理は神戸市中央区北野町の1級建築設計事務所ドディチ・ドディチ(トリーニ・ヤコポ社長)が担当した。
壁面の塗料は、エスケー化研の「エスケープレミアム無機マイルド」を採用した。改修では、室内に雨漏りが進まないように雨漏り対策に細心の注意が払われ、屋根は傷んでいなかったので今回工事は行わなかった。ガラスパテ止は劣化が進んでいたのでコーキング材に変えた。蝶番(ヒンジ)は鉄製であったが、真鍮に替え海外から輸入した。煙突は軽量化するために内部を石膏モールとし、レンガをスライスして貼付けた。この工程は、阪神淡路大震災後の改修工事の時に行われた。
シュウエケ邸は、建築家A.N.ハンセルの自邸として明治29年(1896年)ゴシックを基調とするコロニアルスタイルで建設された。1945年の神戸大空襲で大きな被害を受けた後、シュウエケ夫妻が譲り受け修復を行った上で居宅として使用するようになった。阪神淡路大震災で被災し修復を行ったが閉館。その後は公開されることもなく、2019年10月30日にシュウエケポリサさんが他界した。(享年99歳) 広い庭園には芝生に石灯篭を配置、四季折々に咲く花々、和洋折衷の要素も楽しめ、屋根には水の神様である鯱(しゃちほこ)が火災から建物を守っている。
今回公開された邸内には年代物のフランス製家具や大きなシャンデリア、暖炉などクラシカルなインテリアで統一されており、壁面には絵画(明治時代の浮世絵など)が約200点飾られている。これらは1868年の神戸開港後の「人・物・情報」が行き交う拠点として発達した歴史を垣間見る貴重なレガシーである。