APICミーティングinタイ・バンコク
第26 回APIC(Asian Paint Industry Council)ミーティング2024が11月8日午前9時からタイ・バンコクのモンティエンリバーサイドホテルで開かれ、アジア太平洋地域から10の塗料・インク工業会が〝持続可能性と市場動向〟について議論すべく集まり、関係者や報道等含めて80人余りが参加した。
開会にあたり、ホストを務めるThai Paint Manufacturers Association(TPMA)会長のパピチャット・タンカラバクーン氏があいさつに立ち、参加者に感謝の意を表し歓迎し、今回の議論の主要テーマに持続可能性、技術の進歩、市場の回復力に特に重点をおきたい、と話しスタートした。
パピチャット・タンカラバクーン会長(TPMA)あいさつの要旨は次の通り。
はじめに、塗料業界への環境フットプリントの削減を求める圧力が高まるなか、業界の慣行を世界の環境基準に合わせることの重要性を強調。持続可能性が最優先事項となっており、より環境に優しい慣行を採用することはもはやオプションではなく、業界の将来にとって不可欠であるとし、持続可能な材料調達、低VOC配合、廃棄物削減戦略に関する議論に積極的に参加するよう呼び掛けた。
また、進化する市場の需要に応えるために継続的なイノベーションが必要であるとして、業界を前進させるイノベーションの例として、抗菌性、セルフクリーニング性、エネルギー効率の高いコーティングの進歩を挙げ、これらの開発を受け入れ、今の消費者と他業界の期待に応えるためにも既存および新規の製品ライン双方への対応を奨励した。
さらに、アジア太平洋地域の役割を振り返り、世界で最も活気のある塗料およびコーティング市場のひとつであるとして、品質、イノベーション、環境管理のベンチマークを設定する上でも、主導的な機会と責任があると強調した。
なお、世界的なサプライチェーンの混乱、原材料価格の変動、規制変更がもたらす課題を認識し、これらの障害を克服するために業界全体の協力が必要であるとし、サプライチェーンの多様化、業務最適化のためのデジタル化への投資、従来の資源への依存を軽減するための代替材料の検討など、回復力を構築するための戦略を共有するよう促した。
最後に、業界の将来については楽観的な見方を示し、協力的な努力に革新と持続可能性への取組みにより、塗料およびコーティング業界は、現代の差し迫った環境問題や経済問題に対処しながら繁栄し続けることができる、と結んだ。
その後、APIC事務局を務める日本塗料工業会(JPMA)国際部課長の法月佳子氏による、前回、インドネシアのジャカルタで開催されたAPICミーティング2023の振り返りがあり、続いて、参加国・地域の市場状況、環境対応、活動トピックなどが日本、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、中国、オーストラリア、タイの塗料及びインク工業会の順で発表された。
なお、今回、2022年5月20日に香港で正式に登録された、アジア塗料・インキ連盟(ACIF)も招かれ参加。アジアおよび世界の塗料・インキ分野において、高品質で持続可能な開発を推進することを目指している、と発表した。電子商取引プラットフォーム構築の促進も目指している。
そのほか、招待講演ではタイ工業連盟(FTI)のクリエンクライ・ティエンヌクル会長が「業界全体で公正なビジネス慣行を提唱し、透明性と倫理的な行動を促進する必要性」などを、また化学業界クラブ(CIC)のアティチャット・チャイスパラクル会長が「タイの持続可能な開発目標の推進において化学業界が果たす重要な役割」などを呼び掛けたほか、ChemQuest Groupの CEO であるDaniel Murad氏がコーティング業界における世界市場のトレンドについて包括的な概要を録画プレゼンテーションで解説した。
また、スポンサー企業からのプレゼンでは、Arxadaが建築・建設市場に合わせた抗菌ソリューションと高性能添加剤の開発に注力していること、BASFが性能を落とすことなくカーボンフットプリント削減に力を入れていること、Colossal InternationalがPFASフリー ソリューションで持続可能な工業用コーティングのニーズに対応していること、などが発表された。
次回のAPICミーティング2025は、中国塗料工業協会(CNCIA)がホストとなり、8月の中国塗料博覧会に合わせて上海での開催が決まった。2026年はフィリピン(PPCAI)、2027年はマレーシア(MPMA)、2028年は台湾(TPIA)での開催が予定されている。
アジア・太平洋地域の塗料・インキ工業会が一堂に会するAPIC(Asian Paint Industry Council)は、設立から四半世紀を経て、同地域の権威ある組織となった。塗料・コーティング業界の専門家やリーダーが集まり、知見を持ち寄り、社会や業界トレンドを議論し、イノベーションを促進している。今後は、同地域を越えたネットワークの強化もさらになされていくだろう。