日塗工、労働災害VRを開発
日本塗料工業会(若月雄一郎会長)、長瀬産業、TOPPANは、共同で「塗料業界向け労働災害体験VRコンテンツ」を開発し、3月より販売すると発表した。販売を前に、日塗工は開発の経緯やVRの内容について3月7日、東京都渋谷区恵比寿の日本塗料会館で記者発表を行った。

VR視聴者と実際のVR画像
開発ではコンテンツの制作をTOPPANが行い、日塗工はコンテンツの監修を実施。長瀬産業はプロジェクトのマーケティング支援や、今後は同コンテンツがインストールされた安全教育用VRゴーグルの販売を行う。
VRのコンテンツ内容は、既にTOPPANが自社開発していた「安全道場VR」の10コンテンツに、塗料業界向けに新たに制作した3つを加え13コンテンツをパッケージにし、販売していく。価格は調整中で、ニーズに応じてコンテンツの追加等も検討していくとのこと。

労働災害が疑似体験できる(静電気火災)
塗料製造業向けのコンテンツは、「ドラム缶指挟み」「静電気火災」「撹拌機巻き込まれ」と、実際に製造現場で起きている労働災害を反映し、3コンテンツを制作。各コンテンツは、VR視聴者がVRゴーグルを装着すると労災事象が発生し、疑似体験ができる。その後、原因と対応策のストーリーをVR上で、閲覧できる構成になっている。通常の動画を見るよりも臨場感があり、労災リスクの認識を高められ、VR酔いがない作りになっている。
日塗工が同コンテンツを開発した背景には、同会会員の労働災害の発生件数が横ばい傾向にある点が挙げられる。2023年休業・不休災害は、131件(休業28件、不休103件)、2022年同128件(休業34件、不休94件)。度数率(100万延べ労働時間当たりの労働災害による死傷者)は0・92で製造業全体(1・29)、化学工業全体(1・04)よりやや低い水準にあるものの、改善が求められていた。加えて、ここ3年では死亡事故含む重大労働災害もあったことから労働損出日数が大幅に増加している。
塗料業界に限らず製造業は、作業の多様・多能工化や機械化の進展から労災死傷者数は増加傾向にある。特に2009年から2022年にかけて、休業4日以上の労災死傷者数は約2万7千人増加。これに対し国は現在「第14次労働災害防止計画」において、死亡災害5%以上の減少と、死傷災害の増加傾向の歯止めをかけ、2027年までに減少させると意気込む。安全対策の推進では、製造業者にVRの活用要件の検討を言及していた。こうした中、塗料業界特有の労災事故VRコンテンツを希望する声もあり、日塗工は2024年度の安全環境委員会基準検討ワーキングの活動によりVRコンテンツの開発に至った。
日塗工・安全環境部長の大澤隆英氏は「VRでは、労働災害対策への手段を作った段階。日塗工としての目的は、労働災害を極小化させることにある。いかにしてコンテンツツールを使っていくのか考えていきたい」と話し、特に中小企業の塗料製造業への啓蒙活動に力を入れていきたいとした。