メカトロニクス 塗装への活用
工場で新車塗装や部品塗装に活躍する塗装ロボットはもちろんだが、建設現場向けの塗装ロボットも、バブル真っ只中の1980年代にゼネコン各社が活発に開発。その後、ここにきてドローンなど新世代の小型無人航空機が登場。大学では高所での補修・塗装作業の可能性も探られている。東京都立産業技術研究センターでもロボットの研究が進行中だ。本州四国連絡高速道路では橋梁に特化した塗装ロボットが投入済みだ。
本州四国連絡高速道路塗装ロボットを開発
主塔、箱桁の塗り替えに威力 塗装ロボ10人分の働き
本州四国連絡高速道路は吊り橋の主塔および箱桁形式の橋梁の塗り替えで、ともに1台で10人分の働きをこなす塗装ロボット(塗装装置)を開発。今後はインフラの塗り替えでも人材や人手の不足が見込まれており、塗り替えメンテナンスで塗装ロボットが大きな戦力になることが期待されている。ともに小型化が今後の課題だ。
本州四国連絡橋の吊り橋の主塔の塗り替えは危険な高所作業になる。従来は作業員がゴンドラに乗って塗っていたが、冬は寒風、夏は酷暑にさらされる苦渋作業でもあり、主塔塗装装置の開発が急がれたもの。
ロボットは自動ロール塗装装置と磁石車輪ゴンドラとの組み合わせ。ロール塗装装置は圧送ロールと塗装ロールで構成。ポンプで送られた塗料は圧送ロールの外周からにじみ出て圧送ロールと塗装ロールで薄く延ばされ、塗装ロールの表面の塗料が塗装面に転写される仕組みだ。
塗装ロールは内部のスポンジゴムと表面の皮膜で構成。柔らかいため塗装面の凹凸になじんで均一な塗膜を作れる。スプレーと違い塗料の飛散を防げる上、ハケ塗りより高効率だ。また、ロールを回転ブラシに取り替えることにより自動ケレン(素地調整)作業も行える。回転ブラシには研粒入りナイロン線材を使用し、高速回転させて塗膜を研削。塗膜粉は集じん機で回収され、周囲への飛散がない。
磁石車輪ゴンドラは希土類ネオジウム(永久磁石)を内蔵した磁石車輪で塔壁に吸着し、風が吹いても揺れない。車輪吸着力は250㎏/車輪×4車輪に上り、塗装ロールと塔壁の接触圧を一定に保てる。4輪同時操舵により塔壁のどこへでも移動できる。
磁石車輪ゴンドラには横行用のレールが設けられ、このレール上を塗装ロールや回転ブラシを保持したシャトルが横方向に往復。この水平方向のシャトル往復とゴンドラの鉛直方向の降下の2動作で主塔の全面をカバーできる。
コンパクト化しており、本四架橋のすべての主塔を塗装できるもの。ブリッジ・エンジニアリングとの共同開発は2003年度と早く、2004年度には大鳴門橋の主塔を塗り替えた。各橋の主塔の塗膜の劣化状況を見ながら、投入していく構えだ。
1日当たり、人の作業10人分に相当する500㎡以上の自動塗装が可能で、投入オペレーターも1人か2人で済む。「経済性や安全性の向上と大幅な省力化が可能」(担当者)とのこと。使用塗料は中塗りがエポキシ樹脂塗料、上塗りがふっ素樹脂塗料。
箱桁型の橋梁塗り替えに特化 箱桁用塗装装置
箱桁型の橋梁の塗り替えに特化したのが箱桁用塗装装置。桁外面に取り付けられた点検用補修用作業車に搭載される。塗装装置が作業車上を橋軸と直角方向に移動する動作と、作業車自体が橋軸方向に動く動作との組み合わせにより、箱桁面の全体を自動塗装できるという仕組みだ。
回転ブラシと塗装装置、これらを支える多関節アームと台車で構成され、主塔塗装装置と同様に回転ブラシがケレンを行い、2組の圧送ロールと塗装ロールで塗装する。塗装方向と同回転の第一塗装ロール(ナチュラルコート)と、その後の塗装方向と逆回転の第二塗装ロール(リバースコート)との2組の塗装ロールで行い、溶接ビードや溶接歪みの凹凸にも影響されずに均一に塗装ができる。
作業効率は主塔塗装装置と同じく500㎡/日(人間10人分)。2001年に大島大橋で実橋試験済みだ。