森内塗装、塗装で環境と健康に貢献する
森内塗装(大阪府・泉南市)の森内拓己社長は、経営理念を「心を磨き、技術を高め、全従業員の物心両面の幸福を追求し、地域社会に貢献する」と掲げ、昭和63年から塗装一筋に経営してきた。
会社がある泉南地域は水なすや玉ねぎの産地と知られているが、反面戦前から石綿産業の中心地で、石綿肺、石綿がんによる被害が多かった。森内社長の父や兄弟は石綿が原因で亡くなった。その影響もあって「環境」「健康」に貢献する塗料・塗装を目指している。
環境問題の一つとして、夏のヒートアイランド現象が挙げられる。強烈な太陽光線やエアコンの室外機から出る熱風が原因と言われている。その対策として、「熱交換塗料」は塗膜に特殊な材料が入っていて、熱が接触するとエネルギー変換を起こして電気エネルギーとして消費され、塗装した表面的は熱くならない。業界では知られていない塗料だが、メーカーでは追跡調査をやっており、エコ住宅の材料として期待している。
森内社長は、エコロジーな製品開発にも強い意欲を持っており、いろんなアイディアを持っている。「1%でも可能性があればチャレンジしたい」という。例えばペンキ缶カバーはほとんどがプラスチック製であるが、竹の成分から代替できるのではないかと模索している。カニの甲羅を素材としたらどんな効果があるか。また廃棄される泉南地区の水なすや玉ねぎを乾燥、粉末化して塗料の原料として使えないかなど天然素材の活用を模索している。
数年前には、環境にやさしい日本の柿渋や漆喰をバングラディッシュに紹介するため訪問した。たまたまノーベル平和賞を受賞したユヌス氏にも会うことができ感動したという。ユヌス氏は貧困層を支援するグラミン銀行を創設し、それが2006年のノーベル平和賞の受賞につながった。
建築現場で使うシートは会社の実績や自社のPRがほとんどだが、森内塗装のシートは『こどもミュージアムプロジェクト』に共鳴した内容となっている。企業理念である「美しい心をはぐくむ」「美しい未来をつくる」の他に、子供が描いた絵と「お父さんいつもありがとう今日もがんばって」というメッセージが描かれている。社員は毎日作業する時それを見ることでモチベーションがアップし、大きな効果が上がっていると言う。
このプロジェクトは、大阪府内の運送会社のトラックが起こした死亡事故がきっかけとなっている。さまざまな理由で会社の存続が危うくなった際、社長が「社員は評価し、管理する対象ではない」という考えに至った。一人の運転士がダッシュボードに自分の子供が描いた絵をヒントに、トラックのボディに子供が描いた絵と父親へのメッセージを採用し車にラッピングした。安全運転や、事故防止につながっている。