武蔵塗料HD、中国とベトナムに新工場設立
武蔵塗料ホールディングスは9月8日、中国・重慶とベトナム・ハノイに新工場を設立すると発表した。中長期にわたるグローバル事業の成長を実現するため、重点市場における事業リスクへの対応と成長市場での展開強化を軸とする施策を実施する。
中国の新工場は、重慶市にある重慶阿麗斯科関西塗料有限公司の株式を100%取得し、重慶武蔵塗料有限公司と名称を変更しての新工場設立となる。中国に新たな生産拠点を設けるのは16年振りとなり、敷地面積は約6万㎡、生産能力は年間1万t。同社グループが世界で展開する全11生産拠点中、最大規模の工場となる。
同社の中国拠点は、これまで天津、蘇州、中山と中国東部に集中していた。既存工場では、同国の環境規制が厳しさを増しており、同社においても大気汚染抑制の観点から生産停止命令を受けることがあった。別地域に新工場を構えることで、既存工場が生産停止になったとしても、バックアップ機能として強化される。
また、営業体制にも効果をもたらす。新工場は国家級の化学工業園区に位置しており、同地に事業展開する顧客へ迅速な提案を行える。重慶市は同社の主要顧客である自動車産業の最重点地域の一つであり、自動車生産台数は約138万台(2019年)で、地域別生産シェアは、9.8%に達する。また、ノートパソコンや携帯電話、プリンターメーカーなども展開しており、幅広い分野への生産・供給を図る。
製品に関しても、環境配慮型製品の生産拡大に貢献するための中心拠点の役割を担っており、水系塗料をはじめ各種VOC低減塗料の開発を強化していく。なお、新工場は2021年1月の操業開始を予定している。
ベトナム・ハノイの新工場は、ベトナムバクニン省のQueVo2工業団地内に設立し、同国拠点目の工場となる。ベトナム武蔵のハノイ支店としても営業を開始する。敷地面積は約1万5千㎡で、生産量は最大で年間1,700tを見込む。ASEANエリアで同一国内に2つの工場を持つのはベトナムが初めてとなる。現在建設中の新工場は、2021年1月の操業開始予定。
新工場建設の背景には、大きく三つの理由がある。その一つ目がチャイナプラスワンへの対応である。ベトナム北部は中国と隣接しており、近年中国からの案件移管などが増加傾向にあった。前述の通り、中国の環境規制強化など厳しい状況が続き各顧客の近隣諸国への進出や生産移管などが目立ってきた。新拠点を構えることで、ベトナム北部で受入可能な体制を整える。
二つ目は、ベトナム国内におけるサービス体制の強化が挙げられる。同社は、2011年よりベトナム南部のホーチミン地区のドンナイ省で生産を開始し、直近5年間で生産数量は2.5倍と成長していた。また、近年北部エリアからの受注も増えたことにより、サービス体制の強化が必要であった。
最後に、非日系案件獲得にある。現在ベトナムでは日系顧客比率が約90%となっている。今後、非日系顧客比率を増やすため、ベトナム最大手のビングループや韓国系企業であるSAMSUNG電子やLG電子などの大型案件獲得を目指すと言う。
同社の顧客はベトナム以外でも日系企業が中心の構成となっている。今後は、ベトナムだけでなく新工場を構えた中国など各拠点で、非日系企業の獲得を展開していくと言う。