日本ペイント、壁画による芸術活動支援
東京都中野区では、区内の各場所で壁画(ミューラル)を制作し、日常の中で触れられる芸術を街に広げる活動「中野ミューラルプロジェクト」を展開している。日本ペイントは、このプロジェクトがペイントを主体とするアート表現であることから、同プロジェクトに参画している区内の塗装事業者であるヌリーズ(佐藤政夫社長)を通して、応援している。
2022年度のプロジェクトでは、就労継続支援B型事業所・カフェの「カサ・デ・オリーバ」と「中野駅東西連絡通路」の2カ所をペイント。アーティストが丹精込めて描いたアートが完成したカサ・デ・オリーバは従来、壁がクリーム色で落ち着いた雰囲気のビルであった。これを5色の塗料でアートを描き、ストリート要素を含んだキャッチーな壁面へと変化している。
壁面のデザインを考案したアーティストの高橋鉄平氏は、「普段自分が描いているアートをモチーフにして、カサ・デ・オリーバの活力あふれる感じをイメージしながら壁面をデザインした。もともと中野に住んでいたということもあり、街の中に自分の絵があるのはうれしい。その中でも、今回求められているものと自分のやりたいことがちょうど良いバランスでできたので良かった」とデザイン決定の背景や、プロジェクトの感想を述べている。
中野駅東西連絡通路は、黄色を基調とした温かみのあるアートをペイント。一つひとつの絵には、中野の街を想像させるアイテムや建物が描かれている。現存する店舗だけでなく、過去に存在した店舗も描かれており、中野の過去と未来が感じられるアートとなっている。
4月13日には、中野駅で2022年度の中野ミューラルプロジェクト完成を記念したセレモニーが行われ、酒井直人中野区長や宍田孝明JR中野駅長が参加した。
東西連絡通路のミューラルをデザインしたアーティストの丸倫徳氏は、「中野は江戸時代から歴史のある街で、過去の積み重ねが未来を創るため、その部分からアートを構成した。壁画のネタ探しとして、とにかく歩いてリサーチに力を入れた。パブリックな場所に自分の絵が描かれるのはありがたいし、やっていて楽しかった」と、アートでこだわった部分や想いを語った。
ヌリーズの佐藤社長は、「このプロジェクトはもともと、中野で若いクリエイターが活躍できる場所を作りたいという思いで行っていた地域ボランティアがきっかけで始まったもの。最初は、高円寺などの他のエリアでミューラルプロジェクトに参加しながら経験を積んだ。その中で、ミューラルアートの可能性と地域における重要性を感じ、地元の中野でもプロジェクトを実施したいと思い、行政と組んで2021年からスタートさせた。今後、現場で残った塗料の活用も社会課題を解決する手法として、このミューラルアートを通じてどんどん広がっていったらうれしい」と、プロジェクトの契機やこれからの展望を述べた。
2カ所で使用された日本ペイントの塗料は、いずれも下塗りは水性2液高付着浸透形カチオン系エポキシシーラー「水性パーフェクトシーラー」、上塗りは水性反応形エマルション塗料「水性ケンエース」、クリヤーは打ち放しコンクリート面仕上げ水性高耐候性4フッ化フッ素樹脂クリヤー塗料「水性4Fプーレクリヤー」である。
同社では、2023年度もヌリーズへの支援を通して「中野ミューラルプロジェクト」を応援していく。
※就労継続支援B型=通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である人に対して、就労の機会や生産活動等の機会の提供、また、その他の就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練・支援を行う事業所およびサービス。