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日本ペイントHD、高分子材料の新解析手法

日本ペイントホールディングスは12月5日、高分子材料の強度と構造の関係を明らかにする新しい解析手法を開発したと発表した。高分子膜引張の分子動力学シミュレーションで得られるデータを、数理科学的手法を用いて解析し、材料強度の動的変化に対応する構造因子の自動抽出に成功した。これにより、高分子材料シミュレーションから強度に関する重要な情報を効率的に抽出し、強度特性に影響する具体的な構造を特定することが可能になり、新しい塗料材料の開発など、次世代の材料設計に貢献すると期待される。

東京大学大学院工学系研究科の佐藤龍平助教、澁田靖教授らと、日本ペイントの川上晋也研究員らによる研究グループは、シミュレーションと数理科学的手法を融合させた高分子材料の構造と強度の関係を解明する新しい手法を開発。

 

分子動力学とパーシステントホモロジー解析により高分子膜の強度特性を特徴づける構造因子を特定


本研究では、スーパーコンピュータを用いた分子動力学シミュレーションと数理科学的手法のパーシステントホモロジー解析を組み合わせて、高分子膜の強度を決定づけるミクロな構造の特定に成功した。この手法は、従来の機械学習のような類似データを用いた事前の学習を必要とせず、一切の予備知識なしに材料の強度と構造の関係性を自動的・効率的に明らかにする点で革新性がある。本成果は、塗料をはじめとする新規材料の設計・開発における大きな進展が期待される。なお、本成果は 12月2日(現地時間)に、米国化学会誌「Journal of Chemical Theory and Computation」に掲載された。
 
本研究は、東京大学と日本ペイントホールディングスとの産学協創協定における具体的活動として設置された社会連携講座「革新的コーティング技術の創生」の共同研究テーマの1つとして推進された。この社会連携講座は、2020年10月1日から2025年9月30日までの5年間、設置されている。
 
※分子動力学シミュレーション=材料を構成している原子の運動について、運動方程式を解くことにより、その軌跡を追跡する計算手法。各原子に作用する力および初期位置・速度が分かれば、各時間のすべての原子の位置および速度が一意に決定される。
※パーシステントホモロジー=離散データの解像度を変えてマルチスケールで形状として捉え、図形の孔、空隙、連結成分などの構造に注目し、データの幾何学の情報を定量的かつ効率的に抽出する数理科学的手法。リング(穴)が発生・消滅した時のパラメータ(サイズ等)をプロットしたものをパーシステント図と呼ぶ。