IPCO、ポリテク千葉で講座担当
国際工業塗装高度化推進会議(IPCO・ 坂井秀也理事長)は、高齢・障害・求職者雇用支援機構千葉支部高度ポリテクセンターの依頼を受け、10月28日から3日間、千葉市美浜区若葉の同センターで講座「機械設計に活かす工業塗装技術」を担当し、IPCOメンバーを中心に講師を務めた。
同センターは、全国にあるポリテクセンターでも在職者訓練における先導的役割を担う施設として、主に在職者のリカレント教育、スキルアップを目的に機械系や電子系の分野など、各種講座を500件ほど多数用意している。ここ数年、塗料・塗装への要望も増えたこともあり、同講座の開設を検討していた。
そこで同センターの素材・生産システム系の講師・本多弘範指導員が拠りどころとして書籍『工業塗装大全』を持参し、2022年12月の「コーティングジャパン東京」に来場。手掛かりを探すなか、日本塗装機械工業会と塗料報知新聞社のブースに立ち寄り尋ねた際、偶然にも同書執筆者が理事長を務めるIPCOへの相談を紹介され、それ以来、IPCO役員との初打合せから約2年越しで、今回の講座が開講となった。
担当の本多指導員は、講座設定の背景について、次のように述べている。「ものづくりでは、設計・加工・仕上げ・検査といった工程があり、当施設においてもそれぞれの工程に対応する講座を実施しているが、仕上げの中の塗装技術に関する講座は実施していなかった。ものを作るうえで塗装は欠くことのできない技術である一方、在学中に学ぶ機会も少なく困っている方も多いのではないかと考えていた。最適な塗装、エコな塗装、塗装を考慮した設計等、書籍からの情報だけではなく、実際に塗装や塗料に携わる専門家の意見や、『ここの部分がもう少しこうだったら作業しやすいのに…』といった塗装する作業員の声を反映すること、実際に塗装して検査すること、これらを通じて初めて気づくこと等を設計に活かすことが出来れば、より良い製品づくりに繋がるのではないかとの思いから企画に至った」。
当日のカリキュラムは、「塗料と塗装の基礎技術」「塗装に関わる安全と環境」「塗装工程と塗装方法 (素材と前処理を含む)」「塗装の品質管理」「塗装製品における設計」。午前10時から午後4時45分まで、それぞれ高寺貴秀氏(日本塗料工業会技術部長)、坂井秀也氏(IPCO理事長/坂井技術士事務所所長)、山西和弘氏(パーカーエンジニアリング/日本塗装機械工業会。「素材と前処理」担当)と栁田建三氏(旭サナック/日本塗装技術協会)、高橋大氏(IPCO副理事長/三王社長)、林正明氏(林塗装工業所社長)が担当した。
今回の受講者は6人。特に、2日目午後に塗装実習があり、実際にスプレーガンを手にし、テストピースに粉体塗料を吹付け、乾燥させ、3日目午前に塗膜検査を実施し、塗装の難しさもまた学んだ。
製品設計技術者など塗料・塗装のユーザーが塗料と塗装を座学と実習で体系的に学べる公的な講座が誕生したわけだが、次回への気付きとして本多指導員は「今回の受講者は設計者が多く、質問の多さからもいかに日頃から塗装に関して悩んでいるかが伺えた。また、それに対する講師の解説によって解決の一助になったのではないかと感じる。設計時に注意すべき点、失敗点、塗装現場から設計者への要望など具体的な例を増やすことにより、さらに満足度が上がるのではないか」と所感を述べている。
ものづくりの上流において、塗料・塗装の良さや留意点を押さえた上での製品への塗装が発注されるようになることは、サプライチェーン全体での環境対応、カーボンニュートラルにも寄与する。工業塗装が“製品設計”により活かさるべく、ブラッシュアップした来年の本講座開講に期待したい。