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Cケア宣言会社連絡会、20周年迎える

日本塗料工業会は、「2024年度コーティング・ケア宣言会社連絡会」を11月1日午後1時~5時までリアルとオンラインで開催した。今回、同連絡会20周年の節目にあたり、リアル参加52人、オンライン参加21人、意見交換会には45人が集まった。

環美の工場を見学。塗料混練固化処理システムの説明を受ける

 
午後1時にJR大宮駅西口ソニックシティ前に集まった一行は、廃塗料処理の専門許認可工場・環美の上尾第二工場(埼玉県上尾市)を見学。その後、大宮市に戻り、TKP大宮駅西口カンファレンスセンターで意見交換会を開き、コーティング・ケア宣言会社事例報告として2社からの報告のほか、特別講演では長瀬産業による「サーキュラーエコノミーの最新動向・長瀬産業の取り組み」、また日塗工コーティング・ケア推進部会事務局からは「安全環境管理の実績調査結果」の報告が行われた。 終了後、会場を移し、意見交換懇親会が催された。
 
今回の工場見学先について、コーティング・ケア推進部会事務局の大澤隆英氏(日塗工安全環境部長)は、『安全・環境管理の2023年度実績調査』の「廃棄物発生量、再資源化量、外部埋立て量」において、汚泥、焼却灰・廃ダストの再資源化率がここ数年横ばいの約40~50%で推移したままであることから、再資源化に向けての一助として、固化処理プラント施設を持つ環美の見学を企画したと話す。

塗料混練固化処理システムを開発した環美(埼玉県上尾市)は、廃塗料安定固化処理において100%リサイクルの完全循環型の処理を実現。独自開発の安定固化剤により、廃塗料を瞬時に有害物質・重金属などが再溶出しない処理方法で法定基準内に無害化処理し、その後、100%リサイクル原熱料として、セメント工場などで再利用(再資源化)されている。
 
同社の井出次男社長は「当初、できるわけがない、貴社が出来るなら大手がとっくにやっている」と言われたそうだが、技術を実演しながら説得して回った。いまではセメント会社から「どんどん持ってきてほしい、環美の物は入れる」などと喜ばれるようになり、顧客も増えて第二工場を建てるようになった。「廃塗料は源熱料に生まれ変り、産業廃棄物ではなくなる。塗料メーカーの皆さんが良い塗料の開発をすれば、それだけ固化に苦労することになる、しかし、化学薬品を使わないのが信条。その研究開発に負けないように頑張って何とか技術を向上させている。皆さんが作った塗料を産業廃棄物にしない。産業廃棄物を減らしていく、そのサイクルを大事にしたい。最後まで塗料を役立てもらえるよう、環境産業にしていきたい」と続けた。
 なお、同社は平成23年度東京都経営革新優秀賞において、奨励賞(廃塗料固化剤と処理システムによる事業展開)を受賞。余った塗料や期限切れ塗料を固化する処理剤と処理システムを開発し、事業化したと評価されている。現在、塗料以外からの再利用の声も届くそうだが、まだ塗料に特化し、研究を重ねたいとしている。

意見交換会風景


工場見学会を終え、会場にて意見交換会が開かれた。開会にあたり、コーティング・ケア推進部会長の小坂伊知郎氏は「コーティング・ケア活動に2001年から取り組み、持続可能な社会を目指すものであり、業界として誇りに思う。意見交換会も20周年を迎えた。さまざまな課題、カーボンニュートラルや循環型社会などに対し、次世代へと深め、共有化が大事である。具体的な解決を模索したい」と述べた。
 
特別講演では、長瀬産業から「サーキュラーエコノミーの最新動向と同社の取組み」があり、サプライチェーンでのGHG削減の取組みに注力すべきことや日本でも推進するための枠組みが整いつつある旨の発表があった。
 
宣言会社事例報告では、アサヒペンの兵庫工場製造部油性塗料チームリーダー樋口良一氏が、保安防災への取組みや地域社会との関わり、令和6年に健康宣言の証(協会けんぽ大阪支部)に登録などについて、またカナヱ塗料の品質保証部次長藤永光之氏が、改正安衛法への対応、廃棄物の現状と課題、緊急事態対応訓練などについても発表、共有した。
 
『安全・環境管理の2023年度実績調査結果』について、日塗工安全環境部部長の大澤隆英氏が報告。92社から74社回答(80%)「1.CO2換算エネルギー消費量」「3.廃棄物発生量、再資源化量、外部埋立て量」については、塗料生産量との関係があるが、CO2換算エネルギー消費量、廃棄物発生量は、各社の努力もあり減少傾向にある。「4.PRTR対象物質の取扱量、大気排出量」については、2023年度は前年に比べ、PRTR対象物質の取扱量は16・9%増、大気排出量は12・2%で増であった。ただし、令和5年4月にPRTR対象物質が変わった(第一種指定化学物質462物質→515物質)こともあり、2022年度と単純に比較はできない。「2.安全・環境関係への投資金額、投資比率」については、2023年度の売上金額に対する安全・環境関係への投資比率は0・40%でここ10年のなかでは低位であった。「5.労働災害」については、3年連続で重大労働災害が発生しており、度数率(発生頻度)は製造業全体と比較して低位にあるものの、強度率(災害の重さ)は製造業全体と比較して極端に高位となった。
 
閉会にあたり、コーティング・ケア推進部会副部会長の北村倍章氏は「皆さんの協力のもと、コーティング・ケア活動が拡大している。さらに発表を含め、盛り上げていこう」とあり、終了した。

会場を移し、意見交換懇親会では、日塗工常務理事の田桐澤根氏が「今日はオンライン含め、70人余りが参加した。これをさらに広げていこう。健康・安全・環境を保持する活動に取り組んでいこう。VRも手掛けているので、活用してほしい」と乾杯の発声があり、懇談に入った。