日塗工 、水性有機ジンクリッチ規格を制定
日本塗料工業会(毛利訓士会長)は5月18日、標準化委員会で「厚膜形水性有機ジンクリッチペイント」の日本塗料工業会規格(JPMS32)を承認した。7月の理事会で合意が得られれば正式に制定され、今後は施工実績を踏まえながら日本産業規格(JIS)化を目指す。
ジンクリッチペイントは、主に橋梁などの構造物における重防食塗装仕様の中で、長期防錆性を要求されるさび止め塗料として用いられる。JISでは厚膜形ジンクリッチペイントと明記され、耐塩水噴霧性や耐候性などジンクリッチプライマーよりも厳しい規格となっている。樹脂の種類により、有機ジンクリッチペイントと無機ジンクリッチペイントの2種に分けられる。
今回制定されたのは、有機ジンクリッチペイントのなかでも「水性」となり、長期の期待耐用年数が求められる特性から、規格への制定がこれまで慎重になっていた。しかし、2019年から首都高速道路による同塗料の採用や、昨今のVOC削減を目的とした水性塗料への期待から、規格化の必要性がもち上がっていた。
一方で、防食下地以外では、これまで日塗工では鋼構造物向け水性塗料の規格化を進め、2016年にはJPMS30(鋼構造物用水性さび止めペイント)およびJPMS31(鋼構造物用水性耐候性塗料)を制定していた。JIS規格では、2018年には現行の溶剤型塗料の規格に水性塗料の規格を加えたJIS K 5551(構造物用さび止めペイント)、JIS K 5659(鋼構造物用耐候性塗料)の改定を行っている。 水性で残されていたのが、水性有機ジンクリッチペイント(防食下地)の品質規格であり、規格化することで重防食塗装のオール水性規格が前進することになる。
今回制定したJPMS32のなかで、厚膜形水性有機ジンクリッチペイントの定義を、水を主要な揮発成分とし、亜鉛末、エポキシ樹脂、および硬化剤を主な原料とした2液1粉末からなるもの、または亜鉛末、ウレタン樹脂を主な原料とした1液1粉末の2種類を規定した。この2種類の品質において、違いがあるのではないか、との議論があったが、今回定めた品質を満足すれば同等であるとして極限の性能について言及はしていない。
ほか、見本品や性能試験方法、表示方法などを規定している。なお、水性さび止め塗料を塗装した後、点さび現象となるフラッシュラスト(初期さび)が発生することがある。今回、この現象については、実施工において必要な品質であるとの意見があったが、試験方法、試験板など既存JISにはない特殊な条件であることから、試験再現性等に議論の余地があることや、ほかの水性さび止め塗料の規格との整合を考慮し、同規格では規定せず、今後の課題とした。日塗工担当者は、「構造物用の水性塗料は、施工とセットで進めていかないといけない。実績を見ながら3年を目途にJIS化に繋げたい」と話している。