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塗論 令和時代の新たな製販装のつながりを

2019.08.05

米中間の貿易摩擦問題は、追加関税の応酬などエスカレートし、世界経済に与える影響は大きい。無論、日本も例外ではなく、財務省が発表した16月の貿易収支は輸出・輸入ともに5期ぶりに減少、特に中国向け輸出は8.2%減と落ち込んだ。さらなる貿易戦争のリスクが高まれば、製造業への影響が増すことは、誰もが予測可能な見通しであろう。一方、インバウンド消費が活性化している内需であるが、景況悪化が響けば競争の激化が増し、市場の相当数を占める中小企業にとって厳しい情勢となりそうだ。

経済状況の悪化に、追い打ちをかけるのが、社会構造の変化ではないだろうか。2050年に日本の人口は約1億人まで減少すると試算され、高齢者の増加幅は落ち着くが、生産労働人口の減少が加速する。今、業界でも起きている人材不足は需要が大幅に減らない限り、恒久的に続く課題だと言える。当然この問題は日本だけでなく、グローバル規模の課題であるため、今後、IoT、ビッグデータ、人工知能をはじめとした新技術は加速し、まさに今が、第4次産業革命前夜とも言える。

社会構造の変革期では一企業・一団体だけでは、さまざまな課題に対処していくのは難しい。塗料・塗装業界においても令和初の団体の総会で「他団体との連携」「他業種との交流」など声高になってきたことを感じるのもそのせいではないだろうか。さまざまな課題に対処していくのが難しくなっている現在、製販装という他業界には見られないつながりを持つ塗料・塗装業界は、その利点を最大限生かせる時代を迎えたと言える。

実際に、日本塗料商業組合青年部と日本塗装機械工業会が合同研究事業として「次世代塗装チームラボ」を立ち上げたことは注目に値する。さまざまな専門分野から知識を持ったメンバーが集まり、意見を出し合いながら塗装技術・機械の研究開発を進めていくという。活動方針には「限りある資源の有効活用や環境負荷軽減により循環型社会の構築に努める」とうたっており、塗装を新たなステージに押し上げられるか、期待がかかる。

循環型社会という側面から見ると、これまで以上に環境対応が業界の製品・サービスにも求められるだろう。本特集でも取り上げているSDGs(持続可能な開発目標)という概念が日本を含む国際社会に浸透すれば、目標に挙げている「つくる責任 つかう責任」や「気候変動に具体的な対策を」などの取り組みが活発となり、より環境負荷を低減する製品への移行が進むかもしれない。そうなれば最終処分まで考慮したサプライチェーンの再構築の必要性が増す可能性も出てくる。それには塗料・塗装業界のつながりを生かしながら、他業種とも連携することで、業界の信頼度の向上に先手を打つことが重要となるだろう。

国内外や業界で課題が複雑化する中、牽引する新しいリーダーの存在は不可欠だ。しかし、業界では事業承継に課題を抱えるなど、解決の糸口が探求されている。国も事業承継の問題は重く見ており、法人、個人事業者向けに各種税負担をゼロにする事業承継税制の制度などがある。今後は、親族外承継の推進が重要となり旧経営者の負担軽減や新経営者による新たな事業展開が期待される。

本特集でも事業承継について、それぞれ異なるケースを取り上げたが、いずれもその企業力を “磨き上げ“た結果である。事業承継に限らず、優良な企業として目されるには、“企業価値”を高める経営が必須なのは言うまでもない。

令和時代がスタートした今年、本紙は前身である『塗工之魁』から95周年という節目の年を迎えている。この間、築き上げてきた業界ネットワークこそが塗料報知新聞社の “企業価値”の一つである。令和の時代は変革、スピード化がますます求められる。その流れの中で、強みを最大限生かし、また培ってきた信頼と総合力で、“次世代への有益なビジネスヒントと出会い”を、媒体と事業で提供していく。同時に、こうした活動を通して業界内外の人に感動を与えられることを目指していきたい。