水性塗料化に貢献する新機能性材料「ポリエステル水溶液 プラスコート」
3.新機能性コート剤
当社では、独自技術を駆使し、特殊水系コート剤の研究開発に取り組んでいる。そして、これまでなかった機能性コート剤を開発した。ここでは、水系グラビアインク用樹脂「GX-1157」、非シリコーン系水性離型コート剤「GX-1273」、紙製食品包装用コート剤「GX-1275」について紹介する。
3-1. 水系グラビアインク用樹脂 「GX-1157」
GX-1157は、水系ウレタンや水系アクリルに添加することで、PETや金属への密着性を大幅に向上させることが可能な水系グラビアインク用のポリエステル樹脂である。例えば水系ウレタン単独では未処理PETへの密着が困難であるが(写真3)、GX-1157を水系ウレタンに10%程度添加することによって、密着性の大幅な向上が得られる。(写真4) アルコール(エタノール)との相溶性が良好のため、アルコール添加により水系材料でありながら速乾性を得ることが可能。エタノール原液で2倍、80%エタノールであれば15倍以上の希釈ができる。また、カルボキシル基を有している高酸価グレードのため、架橋反応にも対応できる。
3-2. 非シリコーン系水性離型コート剤 「GX-1273」
GX-1273(表2~4および図1)は、フッ素・シリコーン不使用の水性離型コート剤であり、シリコーンによる汚染を嫌う電子材料用途に最適である。プラスコート同様、乳化剤や分散剤を使用していないため、それによる汚染も問題ない。また溶媒は水のみの完全水系グレードであり、離型剤の水系化に貢献できる。延伸性や透明性に優れた樹脂被膜(写真5)を形成し、用途に応じて離型強度を調整することもできる。PETフィルムへの密着性に優れ、工程フィルムとして使用されている離型フィルムの離型層やテープなどの背面処理剤としての用途が期待できる。
3-3. 紙製食品包装用コート剤 「GX-1275」
現在、全世界的に廃プラの問題が取り上げられており、フィルム業界にもその流れが生まれている。その流れの中で、食品包装材の一部がプラスチック製から紙製へ置き換わってきている。当社では、この流れに対応した樹脂の開発に取り組んでおり、FDA §176.170に準拠した樹脂である「GX-1275」を開発した。溶媒は水のみで構成され、乳化剤や分散剤を使用しない設計はプラスコートと同様である。被膜は透明性に優れており、紙包装材のプライマーとしての使用やバリア剤のバインダーとしての使用など、様々な用途で期待できる。
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4.おわりに
- 金属加工、フィルム加工、繊維加工、塗料など幅広い用途で利用できる「プラスコート」について紹介した。また、独自技術を駆使することで開発した「新機能性コート剤」も併せて紹介した。いずれも、優れた特性などを有した水系材料であり、時代が求めた機能性材料である。今後も、持続可能な社会の実現を目指し、環境対応型の新機能性材料として様々な分野の開発を積極的に進めていき、人と環境に優しく、社会に必要とされる製品ラインナップを取り揃えていく。
執筆者Profile
古賀慎也(こが しんや) 互応化学工業株式会社 事業本部 営業部 営業2グループ
<『塗布と塗膜』Vol.9 No.2 掲載>