IAAE2025、約1万7千人が来場【ブースレポート】
第22回国際オートアフターマーケットEXPO2025(IAAE2025)が2月26日から28日までの3日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイト東5・6ホールで開催された。
同展は、自動車の売買、整備、メンテナンスをはじめ、自動車を取り巻く環境・インフラなど、さまざまな自動車アフターマーケットに関する最新情報・業界動向を、展示・実演・セミナーなどで情報発信している。今回は、3日間で1万7453人が来場した。
恒例の「塗装実演コーナー」も開設。会場内特設塗装ブースにおいて、アクサルタコーティングシステムズ、イサム塗料、関西ペイント、日本ペイント、ロックペイントの5社による塗装デモンストレーションが行われた。
今回の展示会では、ボディーコーティング関連が多数出展。付加価値の高いサービスとして認知度が一層高まっている。また、フィルム関連も多数が出展。カーラッピング、ウインドウ用、ペイントプロテクション用と多彩であった。
5社の塗装実演で見られたのは塗料や工程、関連ツールにおけるまでBP工場の生産性効率をいかに上げるかが主なテーマであった。一昨年頃までは、水性塗料をメインに発表する場となっていた。また、生産性においても測色機によるデモンストレーションが多かったが、現在はクリヤーやパテ等、工程・仕様の全体開発における時間短縮の競演だった。水性塗料も同様だろう。時間をいかに削るのかを勝負しているようだった。
もちろん環境対応というベースは保持しつつ、水性と溶剤のハイブリットを提案したり、ブースから車体を出し強制乾燥せずに、常乾でも乾燥が早いクリヤーを実演したメーカーも同様だろう。パテ製品は他メーカーの使用も可能な製品のため、UV硬化等、近年技術開発競争が高まっている。アプローチは違うがブース作業性を高めた製品がトレンドのようだ。
ある塗料メーカー担当者は「まだまだ材料でブース生産性を高められる余地がある」としており今後の開発に期待したい。各メーカーのブースレポートは下記の通り。
関西ペイント、工場経営をサポート 製品は改善のツール

自補修事業のメインである「RETAN WBエコ EVシステム3.0」
関西ペイントは、自動車補修ビジネスにおいて現在、〝Change!〟をキャッチフレーズに、人が第一のサステナブル・ボディーショップの実現を掲げている。
製品としては二つを上市。一つは、オール水性有機則フリーシステム「RETAN WBエコ EVシステム3.0」で、安心・安全な働きやすい職場を実現する。同製品は、ベースコートに加え、プラサフ、クリヤーをすべて水性化。さらに耐擦り傷性クリヤーや艶消し仕様を追加して補修範囲を広げている。また、すべての製品において有機則対象となる有機溶剤(54種)の含有が5%以下を達成したという。今回、塗装実演コーナーで塗装工程を披露し、水性クリヤーやプラサフの作業性や乾燥性、仕上がりが溶剤系並みのレベルを達成したことをアピールした。
もう一つは、誰もが活躍できる職場の実現に資するという機械学習(AI)エンジン搭載の調色システム「AIカラーシステム」。長年の経験と知識が必要とされる調色工程において、経験が浅いスタッフの即戦力化をサポートするものだ。同社では、いずれも次世代の工場経営をサポートするツールとして位置付けしている。現在、ボディーショップでは労働基準法や、さまざまな環境規制に対応するべく、コンプライアンス(法令遵守)を重視する流れがメインになりつつある。残業の減少や休日確保、工場など職場環境改善による社員の保護と、そのための器具の整備を進めなければ、必要な労働力の確保が困難になる。

測色の作業性を向上させる「AIカラーシステム」
このため同社では、ボディーショップをビジネスとして成り立たせ、ユーザーから選ばれる体制づくりを支援している。人材育成、工場診断、工程改善といった課題解決の提案や研修などトータルサポートを行う。担当者によれば、人手を呼び、ショップの活性化を図ることで、はじめて水性塗料システムやコンピューター調色システムが生きると同時に、アピールする切り札になるとのことだ。
日本ペイント、新たにハイソリッド型クリヤー ニーズに応えて上市
日本ペイントは今回、クリヤーとパテの新製品を出展した。クリヤーは、高機能ハイソリッドクリヤーの新シリーズ「nax プライムクリヤーシリーズ」より「nax プライム(2:1)QDクリヤー」および「nax プライム(2:1)SGクリヤー」である。
QDクリヤーは、速硬化性による作業効率化が得られる。塗装後からポリッシュまでに必要な強制乾燥時間の大幅短縮により、塗装ブースでの滞留時間削減が可能。従来品と比較し、塗装ブース占有時間を28%削減できる。また、低温硬化により環境負荷が低減。強制乾燥の低温化と時間短縮により、ブースの稼働に必要なエネルギーコストを低減する。

ハイブリット塗装を可能にする「naxプライムQDクリヤー」
SGクリヤーは、高外観による作業効率化が得られる。平滑で優れたつやを示すことから、乾燥後の磨き工程にかかる時間が短縮。省工程で、塗装コート回数が通常3回のところ連続で2回に削減し、使用塗料の減量につながる。
パテは、光硬化型1液タイプのパテ「nax UVライトベール」で、特長は作業効率化と労働力不足に対応する「光硬化型1液タイプ」かつ「通年対応」。光を遮る環境下では硬化しないため、可使時間を気にすることなく作業が可能で、従来の2液硬化型ポリエステルパテと比較し、UV照射のため乾燥時間の削減が可能。薄付けしながら重ね塗りでき、研ぎ時間を少なくできる。また、可使時間が長く、経験が少ない作業者でも簡単に塗装が可能である。最大膜厚5㎜/回(硬化時間30~60秒/100℃)で、パテの重ね付け(パテ・オン・パテ)が可能。さらに、同製品は通年使用が可能なため、在庫管理の効率化に貢献する。
「nax UVライトベール」施工動画
https://www.youtube.com/watch?v=lp7i15SCO5A
同社では、オール水性塗料システムも用意している中、ハイソリッドタイプを上市したのは「ユーザーサイドから根強いニーズがあり、作業性や乾燥性でメリットを感じる声がある」とのこと。 水性塗料と溶剤塗料を最適に組み合わせ、環境対応と作業性を両立するハイブリッドシステムを構築。併せて、工場の経営や作業をサポートするカスタマーサービスも構築していく。
ロックペイント、製品情報集約アプリ開発 登録無料、動画コンテンツも

ブース前面には、情報提供のアプリを展示
ロックペイントでは、ユーザーへの情報提供に向けアプリを開発。ブース前面でPRした。「ROCK Poket Navi」は、同社製品の情報が整理され、仕様などをアプリ上から確認できる。登録は誰でも行うことができ、ユーザーだけでなく塗料ディーラーが客先に最新のロック製品や配合データを伝えるにも役立つ。例えばベースコートの色タイプ別のシンナー希釈や、硬化剤配合割合をアプリで確認できるため、マニュアルの集約にも役立つことだろう。アプリコンテンツの中には、動画による塗装マニュアルなどもあり、YouTubeで公開していない動画もある。
塗料製品では、2024年に上市した新製品が並んだ。環境配慮型のポリウレアクリヤー「エコロック プレストクリヤー」は、常温乾燥で熱源不要の製品。強制乾燥を必要としないため、電気・ガス代を削減並びにCO₂の排出量を抑えられる。磨き作業が可能になるまでには、35分~50分(20℃)。従来型のウレタンクリヤーに比べ、作業時間で40%削減。エネルギーコストでは、約80%を削減できる。
新製品では水性アクリルウレタン高機能性クリヤー「ロック ハイドロクリヤーAS」を発表。今年5月上市予定の同製品は、耐擦傷性を有する水性クリヤー。トヨタ自動車の「Self-Restoring Coat」に対応した環境配慮型の製品である。トヨタ車では、同クリヤーの採用車種が高級車から一般車にも拡大していた。一般化する中で、ロックペイントでは水性という付加価値を加え新たなラインアップとして増やした。
ブースに展示した製品の「ロック水性化塗装システム」は、塗装実演でも紹介。同システム「ロック ハイドロシリーズ」は、水性ベースコートとトップクリヤー、プラサフの設定・仕様によりオール水性化による自動車補修塗装の有機則フリーを実現。作業者の安全と周辺の環境配慮を実現する。水性ベースコートの特徴は溶剤塗装と近い感覚で水性塗装が行える。気候や周辺環境に左右されない仕様となっている。

新製品を列挙して出品
アクサルタ、4角度測色の新型測色機、新顔料・艶消しにも対応
アクサルタブースにおける塗料での注目は、特化則対応システム。製品群から特化則対応品をピックアップし、会期初日の塗装実演でも披露した。クロマックス特化則対応製品では、プライマー~クリヤーコートまでの工程別にどの製品の組合せであれば、特化則対応になるか一目でわかる資料を用意。来場者に提案を行った。

賑わうアクサルタブース
実演塗装でも行われた水性ベースコート「クロマックスプロベースコート」は、第3世代の水性塗料で連続塗り、高隠蔽性による塗料使用量削減、メタリックムラの抑制の特長に定評がある。ウェット・オン・ウェットの1・5コートで生産性が高い。なお、昨年からシンナーや硬化剤を国産化しており、供給リスクを減らし、今回のような特化則フリー製品のラインアップに広がっている。
一方、機器関連では今春発売予定の多角型分光測色機「Axalta Irus Scan(アクサルタ・アイラス・スキャン)」を初披露。同社は2010年に国内市場に測色機「アクワイヤーⅡ」を上市以降、バージョンアップを重ね測色技術をリードしてきた。今回発表したアイラス・スキャンは、4角度(既存は3角度)で測色し、艶消しや色変化のある新規顔料にも対応。また、測色機ですぐに測色結果を表示するライブビューイング機能を追加することで、リアルタイムに結果を確認できるようになった。既に欧州市場では発売されており、売れ行きは好調であると言う。国内市場においては「本日は参考出展であるが、近日中に発売予定」とのことである。

新製品の測色機「アクサルタ・アイラス・スキャン」
また、関連資材の提供も今後拡大したい構えであり、関連資材のブランドである「オーデュラ」から、ディスポーザブルペインティングシステム(DPS)のラインアップ拡充を検討しているとのことだ。
昨年発表した自動配合の「アイラス・ミックス」は、宇都宮のテクニカルセンターへ配備済み。現在は、国内市場での発売に向け調整中のとのこと。こちらは欧州市場では、在庫待ちの状況となっており、在庫の確保やサービス展開を検討しながら、上市に繋げたいとしている。