【工場レポ】ニシザキ工芸 塗装武器にオーダー家具
都営地下鉄大江戸線と東京メトロ半蔵門線が交差する清澄白河駅は、2年半前にサードウェーブコーヒー系「ブルーボトル」がオープンして以来、注目となっている場所だ。元々焙煎を自ら行うコーヒーショップが数店並ぶ土地柄に、歴史ある寺院や住宅が並ぶ。ニシザキ工芸(東京都・西崎克治社長)の塗装スタジオは住宅街にあり、外観からは木工塗装が行われているとは、イメージが湧かない。
ニシザキ工芸は木工特注家具の製作・施工を行っている。仕上がりの質感やカラーに対する要望に応えるため、専門の塗装工場(塗装スタジオ)を所有し、手塗りによる塗装が住宅メーカーや設計事務所から評価を得ている。取材で訪れた日は、化粧台、キッチンカウンター、エアコンのルーバーやドアノブに至るまで住居一軒分の木部の家具等の製作に入っており、塗装を行っていた。
インテリアに統一感を求め、メラニン化粧板等のプリント板に飽き足らないハイエンド層がターゲットである(ハウスメーカー等からの仕事依頼により)。この層の仕事は景気に影響されにくく、これまで順調に業績が伸びてきているという。
「木材は塗装の色合い木目の癖など難しい面がある。最後の仕上げは現場の感性に頼るものがある」と西崎社長。下地が違うので、薄化粧でもやり過ぎてもダメで、この調整が難しいという。
例えば、設計段階の塗り板(サンプル)と現場に入ってくる材料では、違う木材のことがある。同じナラ材でも実際に塗る木材は原産国が違うことがあり、国内の北海道産とロシア産では塗装も違ってくる。この場合、最初の塗り板と合わせるのに、現場の技術力が頼りになってくる。
人の「技術・感性」を最大限に発揮するために、設備にもこだわる。塗装スタジオは、色評価用蛍光灯(演色AAA)を採用しており、 調色から塗装後の確認も自然光に近い光源のもとで行えるようにしている。
同社ではショールームのほか、木工塗装の認知度を高めるため、美大生やインテリア関連専門学校生むけのワークショップを実施している。塗装体験をしてもらい、調色の難しさや塗装工程を理解してもらっている。
塗装はどうしても最後の工程になるため、納期的に厳しいところがある。そもそも時間がかかる工程だとは、デザイナーが思っていないこともあるようだ。彼らが、住宅・家具関連の業界に就職した時に、塗装を知っていると、お互いの仕事を理解してスムーズにプロジェクトが進む。そんな機会を作っている。
同社のターニングポイントは1990年に工場から木工機械を撤去し、新たに家具専門の塗装工場を設立したことにあった。元々評価が高かった塗装を武器とした戦略にシフト転換し「塗装技術を握ることで他社と差別化になる」と西崎社長は話す。
今の木工家具でのトレンドを聞くと「仕上げは、塗装しても、塗られていないような質感が求められる。北欧などでは、『ソープフィニッシュ』という塗装を行わない仕上げも見られてきた。これからの塗装の役目は、これまでの保護と色に『完成価値』が重要視される。そのため、塗装技術を磨くことが、我々の使命である」と語る。
ちなみに。。。
写真は、東京木工塗装技能士会が企画する「第10回木工塗装技能コンクール」の同社作品。自由課題が「けん玉」で、目黒大祐工場長が優勝した。
木塗装で重要なのは「感性」。裏付けるけん玉の塗装である。
◆会社概要◆
会社名:ニシザキ工芸株式会社
創業:1923(大正12)年
設立:1953(昭和28)年4月
所在地:
本社・ショールーム
東京都江東区三好2-9-6
塗装スタジオ
東京都江東区三好2-5-4
資本金:2,000万円
代表者:代表取締役社長 西崎 克治
業務内容:特注家具の設計・製造・施工 、オーダーシステムキッチンの設計・製造・施工、特注建具・特注建築部材、家具塗装全般