【製品寄稿】無機複合で進化のふっ素塗料ーエスケー化研
1.はじめに
塗料の基本的な要求性能は基材の保護である。住宅ストックの更新周期は、日本の30年に対して欧米は80~140年と、3~5倍長い。欧米の建物の構造が主に石やレンガであり、日本は木造の文化の違いはあるものの、最近では国交省でも少子高齢化を背景に、今までフローの住宅建設を重視した政策から良質なストックを継承していく政策へと方向転換している。「社会資本ストックの長寿命化を図り、ライフサイクルコストの縮減につなげていく」ことに重点が置かれているのだ。
次世代を担う超低汚染・超耐候無機複合ふっ素樹脂塗料
建物を維持管理する上でリフォーム、リニューアルは欠かすことができず、塗料のように一回わずか百数十ミクロンの厚みで塗装仕上げができ、10回塗り替えに供したとしても厚みは1~2ミリに過ぎないことから、下地の形状を維持し、建物、構造物を長期間護ることのできる建材は他にない。また、塗料も技術開発が進み耐久性能も高まってきている。30年前、アクリル樹脂が主流であった頃から開発が進み、今ではアクリルシリコン樹脂やふっ素樹脂など、アクリル樹脂の4倍以上の性能を示すものも開発されている。
建築仕上塗材が使用される対象は8割が塗り替えであり、その中でも耐久性の高い耐候形1種の製品が選択される傾向にある。その中ではアクリルシリコン樹脂系塗料が約9割を占め、ふっ素樹脂塗料が使われるケースは少ない。しかし、耐久性の高い材料へ切り替わってきた歴史を考えると、ライフサイクルコストを考えた経済性に理解が深まれば、ふっ素樹脂塗料が次世代の主流になるものと考えられる。
このような背景から、建物やインフラを守るという使命を果たすのに最も優れたふっ素樹脂塗料がこれから注目を集めてくることは想像に難くない。当社では、「塗料で社会資本を護る」との使命から研究開発を進め、次世代を担う超低汚染・超耐候無機複合ふっ素樹脂塗料「スーパーセラタイトF」を開発した。
ふっ素樹脂塗料はメンテナンスサイクルを考え、経済的に有利
全ての対象物に超耐久性塗料を使う必要はない。まずは、建物そのものの寿命に配慮していく必要がある。一般的なふっ素樹脂塗料のメンテナンスサイクルは20年といわれている。耐用年数は、壁の向き、立地条件、地域性など環境にも影響されるものの、コストパフォーマンスを考えた材料の選定が必要だ。アクリルシリコン樹脂塗料とふっ素樹脂塗料の価格差は2~3倍。材工の中で材料費の比率は1~2割であり、アクリルシリコン樹脂塗料が12~15年のメンテナンスサイクルを考え、40年以上の建物の寿命を考えるのであれば、ふっ素樹脂塗料の方が経済的に有利だ。
建物の寿命が40年以下であれば、過剰スペックにもなりかねないので注意が必要。現状では超高層ビルや超高層マンションなどへの対応が多いものの、高齢化が進む中、今後は戸建ての塗り替えでも使われていくものと期待が高まる。
スーパーセラタイトF
□超低汚染性
耐久性の高い塗料に欠かせないのが低汚染機能だ。開発当初のふっ素樹脂塗料は耐久性では評価が高かったものの、汚れるという点から塗り替え周期が短くなっていたことも否めない。当社ではセラミックハイブリッドの特許技術の導入によりこれを解決。塗膜表面は「親水性:汚れは殆どが油分である。親水性により雨で汚れが徐々に除去される」「緻密な塗膜構造:塵や汚れを寄せ付けず、汚れの定着を防ぐ」「低帯電性:静電気を低減することにより大気中の排気ガスや粉塵などの汚染物質の付着を抑制」のトリプル効果を発揮し、汚れを寄せ付けない。屋外暴露後6ケ月での目立った汚れは見当たらず、同様の機能を有する過去の多くの実績にもこの優れた超低汚染機能が裏付けられている。
□超耐候性
Si‐Oの無機の部分とふっ素樹脂の結合による有機の部分の複合による三次元的な塗膜構造により、汎用のふっ素樹脂塗料よりはるかに耐久性を高めることに成功した。更に特殊設計のハイブリッド塗膜は、活性酸素などの劣化因子を抑制すると共に、光安定化技術を導入することで、耐久性に相乗効果を与えている。キセノンランプ5000時間照射後も90%以上の光沢を保持しており、その耐候性の高さを証明している。JISの耐候性試験で最も厳しいとされる1種の規定は「2500時間以上の照射で、80%以上の光沢保持率」であることを考えると、その2倍の照射時間で、しかも90%以上の光沢保持率は、今までにない性能の証明につながる。
□優れた作業性
従来の製品は主剤と硬化剤の二液タイプが主流であった。本製品は水性で且つ一液となっている。職人不足により工程短縮を求められており、配合不良による性能の低下もない。更に近隣への臭いの問題などを解決するものである。効率的な作業環境を整えるのもメーカーとしての使命だ。その他、「防かび・防藻性」「優れた作業性」などの特長がある。
3.おわりに
このように、今後、新築に限らず塗り替えでもアクリルシリコン樹脂塗料からふっ素樹脂塗料に徐々に切り替わっていくだろう。「スーパーセラタイトF」は次世代のふっ素樹脂塗料としての要件を満たすものであり、インフラを護るという観点からも市場の拡大に大きく貢献するものと期待が高まる。
エスケー化研 総務部広報チーム 西村信國
※本寄稿は2016年10月27日号(4156号)『塗料報知』の「創立70周年記念特大号」に掲載された内容です。