太平洋セメント、高機能中空粒子で軽量性や断熱性 平均粒子径10μm以下
昨今の環境負荷低減や省エネルギー対応を受け、断熱機能のニーズが高まる。塗料も同様に断熱性を謳う商品販売が増えてきている。また、塗料だけではなく、一般産業製品でも断熱性と併せ、軽量性も付加させるといった物性改良を実現する機能性添加剤が期待されている。
こうした機能要求に対し、太平洋セメントでは粒子内部に空隙を有する中空粒子のラインアップを揃え市場展開している。
※「資料ダウンロード」より、新製品セルスフィアーズのカタログ(材質、基本物性、試験値等)がダウンロードできます。
中空粒子とは
中空粒子とは、中空バルーンとも言われ、名前のとおり、粒子内部に空洞を有するバルーン上の粒子である。無機系の中空粒子としてフライアッシュバルーンとガラスバルーンが知られており、前者は中空の石炭灰であり、後者はガラスを原料に製造している。
フライアッシュバルーンの製造方法は、火力発電所から排出された石炭灰を水に投入して中空の石炭灰を浮遊選別する。その後、乾燥・分級工程を経て、各種用途に適した製品に仕上げる。一方ガラスバルーンは、ガラス粒度を調整後、焼成し、発泡させ製造する。
空洞の形状を保持することで、断熱性や軽量性等の機能付与が可能となり、主にシーリング材や塗料、パテ、建材や耐火物等の添加剤として使用されている。添加のメリットとして、収縮防止、流動性付与なども挙げられる。
平均粒子径10μm以下、中空率70%以上確保で機能性材料用途に
太平洋セメントの中空粒子商材であるフライアッシュバルーン「イースフィアーズ」は、塗料等で採用実績があり、豪州産の石炭灰を原料としたセラミック粒子である。粒径ごと(300μm~75μm粒子)に5グレードを揃えている。用途としては、塗料の他、接着剤、研削用砥石、熱硬化性樹脂、FRPパネル、陶壁等にも広がっている。
そして、中空粒子の新製品として「セルスフィアーズ®」を開発。新規の塗料用フィラーに加え、家電製品や小型電子部材、樹脂製品への適用に優れる品種「セルスフィアーズ®-NF」も揃えている。
同製品は、アルミナ硼珪酸ガラスを素材にした工業製品。天然の中空バルーンなど従来品より粒径が小さいことが最大の特徴で、平均粒子径(D50)は10μm以下。そのため薄膜化、小型化が図れる中空粒子である。無機系の中空粒子でこの粒子径範囲に該当する製品は市場になかったため、各種機能性材料用途の展開が期待されている。
また、微細な中空粒子にかかわらず、中空率は70%以上を確保。そのため、空気に近い特性を有し、軽量性や断熱性に優れる。さらには、無機ガラスで構成されるため、700℃の高温暴露時にも中空状態を保持する。
粒子自体は白色のため、顔料との色合わせも可能。顧客の声として、「白色度を上げたい、マット化したい」というニーズから採用を検討している例もあるそうだ。
さらに、ラインアップを拡充。近年、中空粒子の新たなニーズとして、電子基板に用いられる樹脂フィルム等の低誘電フィラーとして期待する声が高いことに注目。今後、5G/6Gなどの高周波帯を利用した高速通信が広がるに伴い、電子基板に使用される各材料には誘電率や誘電正接といった誘電特性の改良が求められている。
こういったニーズを背景として、基本物性をそのままに誘電特性を改良した「セルスフィアーズ®-NF」を開発・展開している。中空粒子の場合、粒子内部の空間があることで樹脂と混合した場合に誘電率を低下させる効果が特に期待されており、誘電正接が低い性質を持つシリカなど従来から使用されるフィラーと併用されることもあるという。
供給面では、国内に年産数トンの量産製造設備を有しており、安定的に提供できるのも強み。高耐熱性が要求される特殊な環境をターゲットとした塗料用途や電子材料分野での低誘電化ニーズに対応した高機能材料として展開を図る。
担当者は、「セルスフィアーズ®は、市場開発中の段階ではあるが、サンプル提供などの引き合いは多く寄せられている。「これまでの市場にない中空粒子製品のため、採用までには時間がかかると思うが、まずはサンプルなどで性能評価、用途開拓を進めていただき、改善点の要望があれば情報交換などを通して調整しながら、実績を増やしていきたい」と話す。同社HPにてサンプル希望など問合せを受け付けている。
℡03・5801・0351
(太平洋セメント 資源事業部 営業企画グループ)
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