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速乾性と光沢に優れた工業・汎用・ 建築資材向け1液型水性塗料 「アクアシャインGA」の開発

速乾性と光沢に優れた工業・汎用・ 建築資材向け1液型水性塗料 「アクアシャインGA」の開発 <イサム塗料株式会社 加藤大昇>

これまで「塗装作業性」や「塗膜性能」などによって、環境対応型塗料が使用されなかった 塗装分野やさらなる法規制等への対応を含めた環境対応へのニーズに応えるために、工業用から建築資材まで幅広く使用可能な水性塗料「アクアシャインGA」の開発を行った。

キーワード

1液型水性塗料、塗装作業性、速乾性、高光沢、耐久性、安全性、環境対応

1. はじめに

最近の塗料産業の動向を見てみると、世界中で溶剤系塗料から水性塗料へ移行しているが、まだ日本の工業補修分野ではラッカー系・フタル酸系塗料が使用されている。その理由として「1液型のため作業性に優れる」「安価である」などが挙げられるが、溶剤系塗料であるため塗装する際には揮発性有機化合物(VOC)や臭気の発生により、作業者および周辺環境に悪影響を及ぼす。それに伴い、労働 基準監督署の査察で環境測定、塗料従事者の有機溶剤健康診断などの結果により、改善要請を受ける場合がある。また、日本の工業ラインで多く使用されているメラミン塗料や粉体塗料などの金属焼付塗料についても焼付工程でのCO2の発生の問題も存在する。それに加えて消防法上危険物に分類され、引火点が存在するため、貯蔵には指定数量の厳守や適切な保管庫の設置が必要になる。ここに挙げただけでも水性塗料と比べて溶剤系塗料は数多くの注意すべき点があるが、使用されているのは溶剤系塗料が多いのが実情である。

それは、まだ水性塗料は溶剤系塗料に比べ、「低温時に乾燥が遅い」「塗膜の耐久性や光沢が劣る」などの固定観念に支配されているからである。今回、ターゲットを環境対応化することが難しいラッカー系・フタル酸系塗料に絞り、従来の水性塗料よりも作業効率の向上と塗膜性能向上を実現させた水性塗料を上市した。全18原色をラインナップとした幅広い調色力も強みである。「アクアシャインGA」は、速乾性・高光沢・環境と作業者の安全を考慮した非危険物の1液型水性塗料であり、本稿では その概要を述べる。

2. アクアシャインGAの作業性

2-1.一般水性塗料・一般フタル酸系塗料との乾燥性比較

塗装時の作業時間の短縮において重要なのは塗料の乾燥性である。ここでは、アクアシャインGA、一般水性塗料、一般フタル酸系塗料の23℃環境下での指触乾燥時間、指圧乾燥時間を図1に示す。また、アクアシャインGAの1030℃の各温度における乾燥時間について表1に示す。

まず図1の23℃環境下での乾燥性の比較であるが、アクアシャインGAは乾燥性に優れた新設計特殊エマルジョンの採用により、一般水性塗料の50%の時間で塗膜を形成する。また、一般フタル酸系塗料と比較すると指触乾燥ではわずかに遅い結果であるが、これは作業工程上大幅な遅延とはならない時間である。指圧乾燥では、一般フタル酸系塗料の8%にあたる乾燥時間を実現した。

図1 溶剤系塗料・一般水性塗料との比較(23℃)

表1 アクアシャインGAの各温度による乾燥時間

2-2.厚膜でも垂れにくいレオロジー特性

一般的に塗料の粘度が低いものは塗装時にレベリングしやすい、平滑な塗膜になりやすいといったメリットもあるが、垂直な被塗物に対しては重力による垂れを生じやすい。逆に、粘度が高いものは垂直な被塗物に対しても垂れにくいメリットがあるが、レベリングしにくい、凹凸のある塗膜になりやすいといった特徴がある。また、粘度が低い塗料は貯蔵時に顔料などが沈降し、攪拌困難な状態になることがある。これらを調整するために使用されるのがレオロジーコントロール剤であり、アクアシャインGAでは適性なレオロジーコントロール剤を選定し、厚膜でも垂れにくい粘性を付与することができた。ここでは、アクアシャインGAと一般水性塗料を塗装する際の適した粘度に希釈し、垂れ性の比較を行った。75300μmの膜厚を塗布できるサグテスターを用いて塗料を塗布し、膜厚が厚い方を下になるよう垂直に試験体を立てた結果を図2に示す。図2の通り一般水性塗料では、75μmから垂れが生じているのに対し、アクアシャインGAは300μmでも垂れていないことがわかる。この垂れ性により、低隠蔽塗色による厚膜塗装においても垂れトラブルの発生リスクを大きく低減することが可能である。

図2 一般水性塗料との垂れ性比較

アクアシャインGAのレベリング性、塗膜の平滑性については次項で説明する。

3. アクアシャインGAの塗膜品質

3.1 アクアシャインGAの光沢評価

塗料が使用される目的として「被塗物を外的要因から保護する」「被塗物の美観向上」「塗膜による機能の付与」などが挙げられる。

アクアシャインGAでは特殊樹脂の採用と前項で述べたように適性なレオロジーコントロール剤を選定することにより、平滑な塗膜を形成するレベリング性を実現した。これらの要素からアクアシャインGAは1液型水性塗料であるが、クリヤーコートなしで60°光沢値が80以上を確保することができた。アクアシャインGAと一般水性塗料をスプレー塗装にて試験体を作成し、60°光沢値を測定した結果と、蛍光灯を試験体に映り込ませた外観の比較デー タを表2に示す。

表2の通り、アクアシャインGAは一般水性塗料よりも30以上高い光沢値を示す。また、アクアシャインGAは一般水性塗料よりも鮮明に蛍光灯が映る結果となった。

この高光沢の結果から、アクアシャインGAは被塗物の美観を向上させることができると言える。

表2 一般水性塗料との光沢値の比較

3.2 アクアシャインGAの促進耐候性評価

塗料を使用する目的は「被塗物の保護」と「被塗物の美観向上」であるが、塗膜はこれらを長期間維持しなければならない。

ここでは、促進耐候性試験(キセノンウェザー メーター:JIS 560077)による60°光沢保持率と色差(⊿E)の結果を図3、図4に示す。今回作成した試験体はホワイト、オレンジの2色で行い、塗料はそれぞれアクアシャインGA、一般水性塗料、一般フタル酸系塗料を使用した。

図3より、一般フタル酸系塗料はホワイト、オレンジともに500時間の経過から大きく光沢保持率を落としており、1000時間経過後では、アクアシャイ ンGAと比較すると6070%の差があることがわかる。

また、図4より、1000時間経過後の色差(⊿E)においても、アクアシャインGAと一般フタル酸系塗料では約3倍の差が見られる。

この結果からアクアシャインGAは、屋外環境下でも長期間塗膜の性能を維持できることが言える。

図3 一般水性塗料・一般フタル酸系塗料との促進耐候性比較評価(光沢保持率)

図4 一般水性塗料・一般フタル酸系塗料との促進耐候性比較評価(色差)

3.3 アクアシャインGAの耐久性評価

塗膜が劣化する要因は太陽光や風雨などの自然環境だけではない。水、薬品による塗膜劣化も十分に考えられる要因である。ここでは、アクアシャインGAの耐久性について述べる。

まず、耐水性と耐油性試験(JIS 560062)を行い、その試験結果を表3に示す。

耐水性試験(23℃、24時間浸漬)、耐油性(揮発 油2号)(23℃、2時間浸漬)、耐油性(軽油)(23℃、24時間浸漬)にて試験を行い、それぞれの60°光沢保持率の測定とブランク板比較による塗膜 外観の劣化の評価を目視にて行った。その結果いずれの条件においても60°光沢保持率は90%以上を保持し、塗膜外観においても膨れや変色などの塗膜劣化は見られなかった。

この耐久性の結果からアクアシャインGAは工場などで油や水を使用するような環境でも使用できると言える。

表3 アクアシャインGAの耐水性・耐油性評価(浸漬法)

<続き、3-4. アクアシャインGA専用水性プライマーの開発とその防錆性>

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