WEB塗料報知|塗料・塗装、コーティング業界のプラットフォーム

食品用多糖類を増粘剤に 水性塗料設計に新たな提案/ユニテックフーズ

バイオマス原料を採用した製品開発が増えてきている。背景には、SDGsが採択されてから約10年が経過しようとしており、安全性が高い素材や環境負荷が少ない素材へのニーズが高まっている。化学製品向けのさまざまなバイオマス原料が登場した。今回は、食品業界から塗料・塗装分野でも増粘剤として使用可能な、食品多糖類を紹介する。

食品増粘多糖類の専門企業 ユニテックフーズ 

塗料・塗装分野においても、VOC (揮発性有機化合物) の削減が課題となっており、水性塗料への関心も高まる。このたび、ユニテックフーズ㈱は、食品用の天然原料由来の多糖類を増粘剤として塗料原材料として活用できないかと言う提案を行っている。食品でも使用の安全材料を塗料に組み込むことができれば、他社製品との差別化に期待できる。

同社は食品増粘多糖類を前身の時代を含めて50年以上に渡り販売し、ジャム、デザートベース、飲料、介護食、惣菜などの様々な食品で活用されている。食品業界での知見を生かし、天然原料由来の多糖類を他業界への提案を進めている。今回は、レオロジー的特性に基づいて、各種食品増粘多糖類を紹介する。

レオロジー的特性で分類する食品増粘多糖類 

  • ①チキソトロピー性を示す食品増粘多糖類


塗料の代表的なレオロジー的特性として、チキソトロピー性が挙げられる。チキソトロピー性は、一度壊れた構造が時間の経過とともに回復する現象である。例えば攪拌によって粘度が低下した溶液が時間の経過とともに再び粘度が上昇することである。「塗りやすく、垂れにくい」塗料の特性は、まさにチキソトロピー性の表れである。チキソトロピー性を示す食品増粘多糖類としてLMペクチンイオタカラギナンがある。

LMぺクチンは野菜や果物の細胞壁に含まれ、リンゴやレモンなどから抽出される食品多糖類である。分子鎖同士がカルシウムイオンにより結合することでゲル化する。LMペクチンの種類や添加量、カルシウムイオンの濃度等を調整することで、粘度やチキソトロピー性の度合いを調整することが可能である。

イオタカラギナンは海藻の紅藻類に含まれる食品多糖類である。イオタカラギナンはカルシウムイオン存在下で、チキソトロピー性を示す。

ペクチンはリンゴの搾滓やレモン、ライム、などの柑橘類の皮を原料とする


②擬塑性流動を示す食品増粘多糖類 

擬塑性流動は力を加えると粘度が低くなり、力を加えないで置いておいた状態では粘度が高くなる性質である。擬塑性流動を示す食品多糖類として、ガラクトマンナンキサンタンガムが挙げられる。

ガラクトマンナンはマンノースとガラクトースが結合した多糖類で、様々なマメ科植物の種子の胚乳から得られる。グァーガム  (2:1 =マンノース : ガラクトース)タラガム  (3:1 =マンノース : ガラクトース)ローカストビーンガム (4:1 =マンノース : ガラクトース) などがあり、ガラクトース比率が高いほど溶解性が高くなる。

キサンタンガムは微生物(Xanthomonas campestris/キサントモナス キャンペストリス)から生産される食品多糖類である。少ない添加量で高い粘度を出し、低濃度、低シェア(回転数)では他の多糖類と比べて高粘度である。一方で、擬塑性流動であるため大きなシェアがかかると粘度は大きく低下する。

ガラクトマンナンの種類


  • ③ニュートン流動を示す食品増粘多糖類

ニュートン流動は粘度がずり速度と時間に依存しないものである。ニュートン流動を示す食品多糖類としてアラビアガムタマリンドガムが挙げられる。

アラビアガムはマメ科アカシア属の植物の樹液の粘質物である。溶解性が高く、低濃度 (40%以下) ではニュートン流動であり、高濃度 (50%以上) では擬塑性流動を示す。

タマリンドガムはマメ科のタマリンド (Tamarindus indica) の種子の胚乳から得られる食品多糖類である。水に容易に溶解し、食塩、pH、熱に対して比較的安定である。

アラビアガム

組み合わせによる多糖類の活用

食品増粘多糖類の中には、併用することで粘度が上昇するなどの相乗効果がみられるものが存在する。そのため、食品増粘多糖類を組み合わせたブレンド製剤も様々活用されている。当社においても「調味料の染みこみを防ぐブレンド製剤」、「粉末飲料向け分散安定ブレンド製剤」など、多数のブレンド製剤を開発、製造、販売を行っている。多糖類の組み合わせを活用することで、よりニーズに応じた物性を得ることが可能である。

食品増粘多糖類の種類

まとめ

レオロジー的特性や由来原料の違いにより、食品増粘多糖類は種類が実に多様である。それぞれの特徴を把握し、用途に応じて適切な多糖類を選択する必要がある。適切な選択をすることで、食品分野に留まらず塗料・塗装分野での活用が期待される。

参考文献・國崎直道・佐野征男 『食品多糖類』 幸書房 2001

↓各増粘多糖類の概要、構造、特徴の資料ダウンロードは、こちら↓