技能実習制度廃止、「育成就労」制度創設へ
外国人労働者の技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」を新たに創設することを柱とした改正出入国管理法等が6月14日、参議院本会議で与党などの賛成多数により可決・成立した。
2027年までの施行を目指し、同制度では特定技能1号水準の技能を有する人材を育成する基盤とすることで、当該分野における人材を確保することを目指す。また、現行制度では同一業務区分内であっても原則認めていなかった「本人以降の転籍」を就労期間1~2年の就労後に可能となり、労働者としての人権を守る観点が追加されることになった。事業者側の立場においては、面接から採用、教育までの人材投資が転籍されることで無駄になると言う懸念もある。
現行制度では、外国からの実習生が日本で技術を習得し母国へ持ち帰り、産業発展に貢献するという国際貢献が前提にあった。一方で、労働力不足を背景に技能実習生の働きによることで産業が保たれていることが実態としてあり、制度と現実の乖離が問題になっていた。既に在留外国人数341万人のうち技能実習生数は約40万人、特定技能外国人数は21万人を数える。
現行の問題点として、労働者のキャリアパスが不明瞭や労働者としての権利保護脆弱性や技能実習生の失踪問題等、一部運用の不備が指摘されていた。育成就労制度では制度の目的を国際貢献から人材育成・確保に明確に変更し、在留期間も3年で「特定技能」水準取得を目指す。特定技能2号になれば事実上、日本での永住が可能となる。
「特定技能」は国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とした別の制度である。2019年4月から受入れが可能となっていたが、現行の技能実習とは対象の業種にばらつきがあった。新たな制度では育成就労と特定技能は一体のものと捉え、業種も見直される方向だ。
塗装業界でも工業塗装分野を中心に工場の働き手として技能実習生は活躍されていることが多く見られ、産業の基盤を支えていた。実習生の一部では母国に戻り塗装事業を創業した成功例もあった。一方で、近年では実習生も売り手市場の状況もあり、日本語の習得が疎かであったり、人材の質が落ちたとの声も聞こえてきていた。「育成就労」の新設により、技能実習制度では不要だった初級レベルの日本語の試験合格や講習受講が必要となり、対象者は「特定技能」への移行段階でも日本語レベルが問われることになる。
建築塗装でも活躍の場は広がっており、団体幹部は育成就労の創設について「業界としてきちんと受入体制を整えて、広報的なもので業界をPRしなければいけない。人材確保の競争で言えば、韓国や台湾やヨーロッパと比べて日本は平和でとにかく親切で働きやすいイメージを作り上げることも大事だろう。将来的には日本、特に塗装は環境面(暑さなど)で不利になってくる。その安全面の対応を伝えることで、塗装業全体が大きく転換してくると考えている」と見解を示す。