産総研、SGCNTを用いた塗料で電磁遮蔽
産業技術総合研究所ナノチューブ実用化研究センターCNT用途チームの阿多誠介研究員らは、スーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブ(SGCNT)を用いて、高い電磁波遮蔽性能を持つ膜を形成する塗料を開発した。
この塗料は、基材の選択性が高く、バーコート法、スプレー法、ディップ法などの様々な塗布方法が利用できる。そのため平面ばかりではなく複雑な形状の基材にも塗布膜を形成することが可能となった。
さらに形成した塗布膜は高い電磁波遮蔽能と高温での耐久性を持つ。また、柔軟性があり、基材の変形にも追随する。今後、高温環境で使用される自動車用ワイヤーハーネスや、可動部や複雑形状を持つ産業用ロボットなど、さまざまな分野での電磁波遮蔽対策への活用が期待される。
これまで、電子機器の電磁波を遮蔽する方法として、電子機器やそれに接続する部品を金属の筐体に収納する方法が用いられている。最近では、電子機器の多様化や小型軽量化に伴い、樹脂やゴムの複雑な形状の筐体やそれらの材料で覆われた部品が用いられることも多くなっており、複雑な形状の筐体や部品を基材として電磁波遮蔽塗料を塗布し、電磁波遮蔽能を付与する方法が注目されている。
しかし、既存の電磁波遮蔽塗料は、基材の選択性に制限があり、付与できる電磁波遮蔽能が低いなどの課題があった。今回の開発した塗料により、様々な塗布方法で、電磁波遮蔽能を付与した複雑な筐体や部品の塗装が可能となる。
プレスリリース:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170612/pr20170612.html