北大と電力中央研、船底塗料に新化合物開発
北海道大と電力中央研究所の研究チームはこのほど、フジツボが船底に付着するのを防ぐ新たな化合物を開発したと発表。毒性が低いのが特長で、船の燃費を保ちつつ、海洋環境にも優しい船底塗料への応用が期待される。
フジツボは幼生のころは海中を浮遊し、成体になる際に船底や岩場などに群生して固着する性質がある。 このフジツボが船底に固着すると、水中での抵抗が大きくなるため、船の推進効率が低下する。最大で実に4割も燃費が悪化するとの研究もある。
このため、船底には通常、フジツボの付着を防ぐ「防汚剤」が塗布されるが、現在使用されているのは毒性によりフジツボを殺す「生物殺傷型」が多い状況だ。加えて、海洋環境への影響も懸念されていた歴史もある。
研究チームは、複数のアミノ酸がつながったペプチド(小型たんぱく質)の一種「ドラスタチン16」という化合物に着目。アメフラシがフジツボの付着を防ぐために出しているとみられる物質で、毒性は低いものの、合成するには複雑な過程が必要だった。
同チームは、ドラスタチン16の構造の一部を合成。構成するアミノ酸を別の種類に置き換えるなどした結果、高い付着防止作用と毒性の低さを兼ね備え、比較的簡素な工程で合成できるペプチド開発の成功に至った。
今後は塗料に配合した際の性能や、自然分解できるかなどを調べるという。同チームでは「環境に悪いと言われている生物殺傷型の塗料を置き換えていけれれば良い」と話している。