オーウエル、 国際線機材にリブレット塗膜
オーウエルは、日本航空(JAL)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、と、世界で初めてボーイング787‐9型機(JA868J)の機体胴体の大部分にリブレット形状の塗膜を施工した。リブレット形状塗膜を施工した機体が国際線として運航することも世界初である。
JAL、JAXA、オーウエルでは、航空機の脱炭素化を推進している。その一環として、オーウエルが改良を続けた技術であるPaint-to-Paint Method(※1)により機体外板にリブレット(※2)形状塗膜を施し、耐久性と燃費改善の効果を検証してきた。2022年7月にはJALの国内線機材(ボーイング737‐800型機)でリブレット形状塗膜の耐久性を検証。2023年11月からは胴体下部に大面積を施工し、燃費改善効果の確認を進めてきた。
この結果、JAXAによる風洞試験や数値解析により、国際線機材(ボーイング787‐9型機相当機体)の抵抗低減効果を確認できた。オーウエルによる機体大型化に対応できるリブレット形状塗膜施工システムの開発により、国際線機材の胴体上部まで施工面積を拡大。検証を進めることとなり、国際線における長距離飛行で、さらなる燃費改善効果が期待できるとしている。
オーウエルが開発した施工システムは、熱制御システムと半自動施工システムからなる。前者は、圧着工程におけるシート状態の最適化や、連続供給が可能である。後者は、繰り返し精度の高い塗工ができ、半自動により工数を削減できるものだ。今回施工した機体では、巡航時の抵抗低減率が0・24%となり、これにより年間約119tの燃料消費量と約381tのCO₂排出量の削減が期待されるという。これはスギ約2万7千本の年間CO2吸収量に相当するとのことである。
Paint-to-Paint Methodは、塗膜に直接リブレット形状を施工するため、デカールやフィルムによるリブレット加工と比べて、重量の軽減や耐久性の向上が期待できる。今後、大面積施工したリブレット形状塗膜の耐久性、美観性や、長距離国際線における燃費改善効果を検証。さらなる施工範囲の拡大も目指し、3者の協力による航空機の脱炭素化を推進していく。
※1:Paint-to-Paint Method=既存の塗膜上に水溶性の型で塗膜に凹凸を形成する手法。オーウエルとJAXAの共同特許(特許第6511612)
※2:リブレット=サメ肌形状によって水の抵抗が軽減されることをヒントに考案された微細な溝構造